牛は基本的には臆病な連中である。大方の場合、人間からは逃げようとする。正面に立てば後退するし、後ろから近付けば前に逃げる。それを上手に利用して「牛追い」をする。搾乳パーラーに連れていったり、牛舎を掃除するために外に出したりするわけだ。
それでも結構個体によって性格に差がある。超ビビりで何の苦労もなく追っていける奴もいれば、ぺちぺち叩いてやっと動き出す肝の据わった奴もいる。それから先頭に立ってずんずん進んで行く奴と、絶対に自分では先頭を歩きたくない奴とがいる。人間でもいますね先陣切るのには抵抗があるってひと。皆さんはどちらでしょうか。
見回りのために牛舎に入ると、肝が据わってる奴は近寄ってきて舐めてきたりもする。子牛の頃あまり懐かせすぎてしまうと、大人になっても親愛行動で頭をぶつけてきたりして危ないみたいだ。臆病でも、牛の方がヒトよりずっと強いからね。程よい距離感が必要で、優しくしすぎても良くないのだ。
酪農歴の長いベテランの方たちは一頭一頭の個性が頭に入っていて、「あ、こいつは後回しだね」とか「こいつを先に行かせよう」とかって瞬時に判断していく。僕は人間相手ですら顔と名前を一致させるのにも時間がかかるタイプなので、そういった能力を目の当たりにするともはや魔法のように見えてしまう。こればっかりはすぐにはできる気がしない。そうした域に達するのはいつになることやら。精進。